【写真測量夜話 第5回】 みちびきの軌跡

前回の続きから、です。img000007

 

 

前回のお話は、上の図で点O,O’,P,P’の座標(緯度、経度、標高)は具体的にどうやって求めるの?というところまででした。

上の4点の座標さえわかれば、再三出てきている下の図で

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建物の角(紫色の点)の座標値を求めることができます。今回はまず点O,O’について見ていきたいと思います。

 

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とはいえ…。

 

この点O,O’の座標取得についての説明、実はカメラの姿勢取得も併せて「撮影(飛行)時にGPS/IMUで計測してます」の一言で済んでしまいます…。(※1 ※2)

しかも、GPS/IMU(又はGNSS/IMU (※2))の詳細ついては、インターネット上に限っても分かりやすい解説が多数あるでそちらにお任せして、とするとますます書くことがありません。簡潔にまとめると、

”GPS(衛星測位)で一定時間ごとに測定した位置情報”と”IMU(慣性計測装置)でより細かい周期で測定した姿勢+加速度情報”を併せて解析し、飛行時の連続的な位置と姿勢を正確に求めている。

というところでしょうか。

 

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これで今日のお話を結んでしまっては少々物足りませんね。地理情報や測量に関する技術情報ブログなのに開始5か月目にしてようやく”GPS”という用語が出てきたことですし、今月初め(2014年12月3日)無事旅立ったはやぶさ2もいいけどこっちもよろしくね!ということで日本が打ち上げた測位衛星、準天頂衛星初号機みちびきが頭上のどこにいるかがGPS衛星の位置と併せて一覧できるアプリケーションを紹介したいと思います。

下の画像はJAXAの準天頂衛星システム(QZSS) みちびき データ公開ウェブサイトで公開されいる「QZレーダー」の画面です。GPS衛星の位置も確認でき、ピンクのアイコンがみちびき、青いアイコンがGPS衛星です。

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もちろんスマートフォンのアプリケーションでは、実際にスマートフォンが受信しているGPS等の電波からその時点の各衛星の位置を表示したりといったものもあるのですが、上のQZレーダーでは時間とともに衛星がどのように動くかがとてもわかりやすく、レーダー部分のすぐ下のスライダーを動かすと衛星がぐりぐりと移動します。星座早見盤の測位衛星版ですね!

手軽に使ってみるには、まず上記サイトからダウンロード・起動した後、メニューの[設定]→[動作モード]で[オンラインモード]にチェック(要インターネット接続)して下さい。PCで見る分には同じく[設定]から[東西南北]で[見下ろしモード]にした方が東西南北がわかりやすいかもしれません。タブレットで見ることができる場合は[見上げモード]にして頭上にかざすとよいです。

あとは[都市名]から好きな場所(日本国内にしましょう。)をえらんで[リセット]ボタンを押すと、その時刻の衛星の位置が表示されます。スライダーを動かすことで時間経過にともなう衛星の位置変化を眺めることができます。「みちびき」の位置変化は他のGPS衛星とどう違うのか、是非眺めてみて下さい。

 

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眺めてみましたか?他のGPS衛星(青いアイコン)がめまぐるしくレーダー内に出たり消えたりしている中、「みちびき」はぐるぐると8の字を描いてほぼ常時レーダーに表示されていますね。準天頂衛星であるみちびきは、地上に非対称の8の字を大体1日に1回描くように軌道を周回しながら、衛星測位のための信号を送っています(※3)。

はやぶさ2が地球に還るのは6年後。それまでにみちびきが繰り返し描く8の字、2000以上。実際の運用がどうなるかはわかりませんが、はやぶさ2が地球に還る頃、みちびきは奇しくも打ち上げから10年の設計寿命を迎えるようです。地味な動きながら、私たちの日常生活に役立つ信号を送ってくれる「みちびき」、紹介したQZレーダーなどを利用して時々様子をうかがってみて下さい。

 

※1 実際は撮影後に補正のための調整計算をしたりしているのですが、夜話-気軽な話-としての範囲を超えてしまうので割愛します。

※2 より日常的な用語ということで”GPS”としていますが本来はGPS・GLONASS等を総称して”GNSS”という用語を使用します。

※3 高仰角(空の真上の近く)から信号を送ることができるのは1日のうち8時間程度であり、後続して打ち上げ予定の測位衛星(準天頂衛星2基+静止軌道衛星1基)と併せて24時間稼働可能な測位システムが運用されることが決定しています。

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