【写真測量夜話 第2回】 彼あるいは彼女がメスマークで伝えたいこと

性別ではありません。

 



 

測量の世界でメスマークと言ったとき、これは「空中写真測量を行うときに、図化機で実体観測(3D表示での観測)をしながら対応する地物の位置を定める場合に使う目印」を意味します(出典:weblio 測量用語辞典 – メスマーク

現代ではここでいう図化機はほぼ100%「デジタルステレオ図化機」を指し、これらは3D表示に対応したディスプレイを必要とする以外は一般のPC上で動作するアプリケーションソフトウェアとして作成されていますので、「メスマーク」≒「マウスカーソル」という理解でも構いません。

今日はこの「メスマーク」を中心に据えて、私たちがデジタルステレオ図化機でデータを入力するときに、デジタルステレオ図化機にどんな情報を伝え、それを図化機がどのように受け取っているのかを解説します。

空中写真測量って?デジタルステレオ図化機って?という方はまずこちらの記事を、是非。

地物ってなに?という方はこちら(国土地理院サイト)も是非。今回の記事に限っては「例えば建物。どんな形か描くためには建物の角をデータとして入力しないといけない。」くらいに思って下さい。

 



 

さて、冒頭のメスマークの辞書的な意味からも明らかなように、デジタルステレオ図化機のユーザーがメスマークで伝えたいのはとどのつまりは「地物の位置」です。

どのデジタルステレオ図化機でも、「メスマークの位置は現在東経139度44分28秒8869、北緯35度39分29秒1572、標高25.6mです。(※1)」というようにメスマークが地球上のどの位置(座標)を差し示しているのかが常にわかるようになっており、ユーザーが図化機上に表示されているとある地物にメスマークをぴったり合わせて入力すると、その地物はこれこれの位置(座標)だということでデータを入力できます。

ところで、メスマークはデジタルステレオ図化機を使用しているユーザー、つまり2枚の空中写真を立体視している人からはどのように見えるのでしょうか?メスマークは標高値も含めたある座標を示すものですから、例えばメスマークが上記の位置にあり、仮に平面上のその地点の標高が24.0mで空中写真に地面が写っているとすると、メスマークは3D表示された空中写真上で地面から1.6mの高さに浮かんでいるように見えます。たまたまその場所に、たまたま身長がぴったり160cmの人が写っていると、メスマークはその人の頭にぴったり乗っているように見えます。

このように、メスマークは3D表示された空間に浮かんだものとして見え、デジタルステレオ図化機のユーザーは3D表示した空中写真上でこのメスマークの位置を高さも含めて移動することができます。そのため、ユーザーはメスマークを動かして地物に(高さも含めて)ぴったりと合わせることでその地物の位置を三次元的に定め、データを入力できるのです。

 



 

では、ユーザーが地物の位置を示した、つまり、ある地物にぴったりとメスマークが合っていると判断してデータを入力したとき、デジタルステレオ図化機はどのようにその情報を受け取るのでしょうか?

こちらの記事の最後、おまけとして載せているGIFアニメーションには赤いマークが表示されています。実はこれがメスマークに相当するもので、ちょうどビルの角を示した状態になっています。これを1枚ずつに分解して拡大すると、次のようになります。

building01

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すこし分かり難いですが、この2枚は3D表示における左写真・右写真で、それぞれの写真上にメスマークが、同じ建物の同じ場所に表示されています。

実はこれが、ユーザーが地物の位置を示したときにデジタルステレオ図化機が受け取る重要な情報で、「左写真のここと右写真のここには同じものが写っている」つまり、「左写真のここと右写真のここには地球上の同じ座標(緯度、経度、標高)が結像している」と受け取ります。

「左写真(or右写真)のここ」というのは原始的には画像座標で、写真左上から右に○ピクセル、下に△ピクセルといった値なのですが、上記の情報を起点として、デジタルステレオ図化機の内部ではメスマークが指す地球上の位置座標を計算していきます(※2)。

 



 

ということで、

デジタルステレオ図化機でデータを入力するとき、私たちはメスマークで地物の位置を指し示し、デジタルステレオ図化機はそれをまず「左右それぞれの写真で指し示された位置には地球上の同じ座標(緯度、経度、標高)が結像している」と受け取ります。

という一文で済むところを長々と綴ってきました。「左右それぞれの写真で指し示された位置」から「地球上の座標」を得る過程については、また今度。

 



※1 「地球上の特定の場所」と分かりやすいよう便宜的に緯度経度としましたが、実際の所はまず緯度経度ではなく平面直角座標系を使用します。

※2 現実の図化機ではリアルタイムに計算が繰り返され、本文中にもあるようメスマークの地球上での座標値は常にわかります。

 

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