測量士試験の過去問題を解くシリーズH.28年度第2回目です。
今回はH.28年度午前No.2とNo.3の問題を解いていきます。
まずはNo.2から。
[H28-午前No.2 問題] 次の文は,地理情報標準プロファイル(以下「JPGIS」という。)について述べたものである。[ ア ] ~[ オ ]に入る語句の組み合わせとして最も適当なものはどれか。次の中から選べ。 JPGISは,地理情報に関する国際規格(ISO規格)及び日本工業規格(JIS規格)の中から,地理空間情報の概念[ ア ]を記述し[ イ ]するために必要となる基本的な要素を抽出し,[ ウ ]したもので,地球上の位置と直接的又は間接的に関連付けられた[ エ ]又は現象に関する情報処理技術のための実用標準である。 測量計画機関が公共測量を実施するときは,得ようとする測量成果の種類,内容,構造,品質等を示すための[ オ ]をJPGISに準拠して定めなければならない。 ア イ ウ エ オ 1. オブジェクト 体系化 符号化 スキーマ 作業規定 2. オブジェクト 符号化 体系化 スキーマ 作業規定 3. オブジェクト 体系化 符号化 スキーマ 製品仕様書 4. スキーマ 符号化 体系化 オブジェクト 製品仕様書 5. スキーマ 体系化 符号化 オブジェクト 製品仕様書
解答例は、
- 「概念」と繋がる言葉で「スキーマ」は使われるが、「オブジェクト」は使われないため、正答は4か5。
- JPGISは互換性のある詳細な実用データを得るための規格なので、地理空間情報を「符号化」することが目的になる。
- 上記から、正答は4。
となります。
この問題の前半部(一文目)は、国土地理院公式のJPGIS序文(国土地理院ウェブサイト)の一部ほぼそのままなので、見覚えのまま回答できた方もいらっしゃるのでは。
解説ですが、アとエはそれぞれの言葉の意味をそれぞれ合う方に当てはめます。
また、イとウについてはJPGISが何を得ることを目的としているか、という点からイの「符号化」から当てはめるのが順当な解答方法でしょう。
オについては、測量法第34条で定められる作業規程の準則(国土地理院ウェブサイト)に記載されています。(内容下記)
(測量の計画)
第五条三項 計画機関は、得ようとする測量成果の種類、内容、構造、品質等を示す仕様書(以下「製品仕様書」という。)を定めなければならない。
一 製品仕様書は、「地理情報標準プロファイル Japan Profile for GeographicInformation Standards(JPGIS)」(以下「JPGIS」という。)に準拠するものとする。
二 製品仕様書による品質評価の位置正確度等については、この準則の各作業工程を適用するものとする。ただし、この準則における各作業工程を適用しない場合は、JPGISによる品質評価を標準とするものとする。
続いてNo.3。
[H28-午前No.3 問題] 次のa~eの文は,測量作業機関が公共測量を行う場合に留意しなければならないことを述べたものである。明らかに間違っているものは幾つあるか。次の中から選べ。 a. 測量作業を円滑かつ確実に実行するため,適切な実施体制を整えた。 b. 作業計画の立案を十分な実務経験のある測量士補に担当させ,工程管理及び精度管理は測量士に担当させた。 c. 測量計画機関から検定を受けるように指定された測量成果について,検定に関する技術を有する第三者機関に検定を依頼した。 d. 測量計画機関から貸与された測量成果を,他の測量計画機関から受注した作業においても有効活用するため,社内で適切に保管した。 e. 企業にとって情報の保護は社会責務でもあることから,社内で情報セキュリティ講習会の定期的な実施やウイルス対策ソフトの導入など,情報漏えい防止の対策を講じた。 1. 0(間違っているものは1つもない。) 2. 1つ 3. 2つ 4. 3つ 5. 4つ
解答例は、
- a.→実際の業務においてよい手筈であり、明らかに間違っているとはいえない。
- b.→測量士補は測量の計画を作製することは許されていないので、明らかに間違っているといえる。
- c.→要請に正しく対応しているので、明らかに間違っているとはいえない。
- d.→他社・他機関などから貸与された情報は適切に使用したのち返却すべきであり、横領や流出に当たる行為はすべきではない。よって明らかに間違っているといえる。
- e.→情報に対する認識も、情報の保護のための取り組みも正しいといえるため、明らかに間違っているとはいえない。
- 以上より、明らかに間違っているのはbとdの二つ。よって正答は3。
となります。
前年(H27年)度試験の午前問題No.3と同じ内容の記述も多く、概ね印象のまま答えて正答になる問題ではないでしょうか。
唯一専門知識と言えるbに関しては、測量士と測量士補の担当できる業務の違いを問うています。こちらは測量法に明記されています。(内容下記)
(測量士及び測量士補)
第四十八条 技術者として基本測量又は公共測量に従事する者は、第四十九条の規定に従い登録された測量士又は測量士補でなければならない。
2 測量士は、測量に関する計画を作製し、又は実施する。
3 測量士補は、測量士の作製した計画に従い測量に従事する。
No.2、No.3の解説は以上です。