【H27測量士試験過去問題解説 第4回】午前No.2, No.3

測量士試験の過去問題を解くシリーズ第4回です。

今回はH27年度午前No.2とNo.3の問題を解いてみましょう。まずはNo.2。

[H27-午前No.2 問題]
次の文は,ITRF(International Terrestrial Reference Frame:国際地球基準座標系)について述べたものである。[ ア ]~[ オ ]に入る語句の組み合わせとして最も適当なものはどれか。次の中から選べ。

ITRFは,GNSS等の宇宙観測技術を用いた国際協力による観測に基づき,構築・維持されている三次元直交座標系の測地基準系である。その座標系は,地球の重心を原点とし,[ ア ]をグリニッジ子午線と赤道の交点の方向に,Y軸を[ イ ]の子午線と赤道の交点の方向に,[ ウ ]を北極の方向にとっている。
我が国では,地球の形状と大きさを近似する回転楕円体として[ エ ]楕円体を採用しており,その[ オ ]は,ITRFの[ ウ ]と一致している。

	ア	イ		ウ	エ	オ
1. 	X軸	東経90度	Z軸	GRS80	短軸
2. 	Z軸	東経90度	X軸	WGS84	長軸
3. 	X軸	東経90度	Z軸	WGS84	短軸
4. 	Z軸	西経90度	X軸	WGS84	長軸
5. 	X軸	西経90度	Z軸	GRS80	長軸

例によって解答例から。

 

  1. 赤道面がXY平面だろうということでアはX軸、ウはZ軸。よって、正答は1,3,5のいずれか。
  2. 地球は自転によって赤道方向に膨らんだ回転楕円体なので、Z軸(北極方向)は短軸。よって5は誤りで、正答は1か3。
  3. 1と3の違いはエのみ。これは(覚えておくしかなく、)GRS80。よって正答は1。

となります。また「我が国で採用している回転楕円体」がGRS80とはっきり覚えてさえいれば、

  1. エはGRS80なので正答は1か5
  2. 北極方向は短軸。よって5は誤りで、正答は1。

と簡単に答えがでます。

さて、知識を問う問題なので、何のどこを覚えておけばよいか見ていきましょう。ITRFについて述べたのものとの問題文にありますが、関連する記述が測量法では第十一条三項にあります。長いですが第十一条を全文引用。

(測量の基準)
第十一条  基本測量及び公共測量は、次に掲げる測量の基準に従つて行わなければならない。
一  位置は、地理学的経緯度及び平均海面からの高さで表示する。ただし、場合により、直角座標及び平均海面からの高さ、極座標及び平均海面からの高さ又は地心直交座標で表示することができる。
二  距離及び面積は、第三項に規定する回転楕円体の表面上の値で表示する。
三  測量の原点は、日本経緯度原点及び日本水準原点とする。ただし、離島の測量その他特別の事情がある場合において、国土地理院の長の承認を得たときは、この限りでない。
四  前号の日本経緯度原点及び日本水準原点の地点及び原点数値は、政令で定める。
2  前項第一号の地理学的経緯度は、世界測地系に従つて測定しなければならない。
3  前項の「世界測地系」とは、地球を次に掲げる要件を満たす扁平な回転楕円体であると想定して行う地理学的経緯度の測定に関する測量の基準をいう。
一  その長半径及び扁平率が、地理学的経緯度の測定に関する国際的な決定に基づき政令で定める値であるものであること。
二  その中心が、地球の重心と一致するものであること。
三  その短軸が、地球の自転軸と一致するものであること。

また、併せて国土地理院の測量法についてのページの、地心直交座標系に関する告示を見ておくとよいでしょう。ただ、残念なことに「GRS80」という単語には中々たどり着きません。同じく国土地理院の日本の測地系を読んだり、(公社)日本測量協会発刊の「-公共測量- 作業規程の準則 (平成23年3月31日改正版) 解説と運用」を購入、参照するとよいでしょう。

 

 

続いてNo.3。

[H27-午前No.3 問題]
次のa~eの文は,測量作業機関が公共測量を行う場合に留意しなければならないことについて述べたものである。明らかに間違っているものは幾つあるか。次の中から選べ。

a. 現地での測量作業において,作業者の安全の確保について適切な措置を講じるように努めた。
b. 測量計画機関から貸与された測量成果を,他の測量計画機関から受注した作業においても有効活用するために,社内で適切に保管した。
c. 国立公園の特別地域内でやむを得ず樹木伐採の必要が生じたため,測量計画機関へ報告し,環境大臣に伐採の許可を申請した。
d. 基準点測量において,業務を効率的に進めるため,測量計画機関の承認を得ずに,平均計算を他の測量作業機関に請け負わせた。
e. 情報の管理は非常に重要であることから,社内で情報セキュリティ講習会を定期的に実施し,従業員を参加させた。


1. 0(間違っているものは1つもない。)
2. 1つ
3. 2つ
4. 3つ
5. 4つ

一応解答例から。

  1. a. → 明らかに間違っているとはいえない。
  2. b. → 明らかに間違っている。
  3. c. → 明らかに間違っているとはいえない。
  4. d. → 明らかに間違っている。
  5. e. → 明らかに間違っているとはいえない。
  6. 明らかに間違っているのはbとdの二つ。よって正答は3。

となります。この問題は、あえて言えばcに少し不安を覚える(国立だから管理は国でよい?環境大臣への申請で正しい?)という程度で、ほぼ一般常識、一般的な倫理観で答えれば正解できると思います。

が、この手の、間違っているもの(あるいは正しいもの)の数を解答させる問題でよくやってしまうのが

間違っているものは2つだ! ⇒ 選択肢で「2」をマーク。。。

というミスです。気が付いたときの精神的ダメージが大きいので注意しましょう。筆者も経験あります。悲しいです。

 

というところで、続きはまた今度。

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