今回は平成27年度測量士試験・午前のNo4、No5の2問について解説します。
[平成27年度 測量士試験 午前 No.4] 次のa~eの文は、測量法における測量の基準について述べたものである。明らかに間違っているものだけの組み合わせはどれか。次の中から選べ。 a. 位置は、天文学的経緯度及び東京湾平均海面からの高さで表示する。 b. 測量の原点は、日本経緯度原点及び日本水準原点である。 c. 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による地殻変動に伴い、測量の原点の位置が移動し、原点数値にかい離が生じたことから、測量の正確さを確保するため、原点数値を改正した。 d. 公共測量における距離及び面積は、日本測地系で想定された回転楕円体の表面上における値で表示する。 e. ジオイドは、平均海面を陸地に延長したと仮定した場合にできる面であり、その形状はゆるやかな凹凸を持ち、局所的に複雑な形状となっているため、水平位置を求める測量の基準面には適していない。 1. a, b 2. a, d 3. b, c 4. c, e 5. d, e
a. 測量法第十一条1項第一号で「位置は、地理学的経緯度及び平均海面からの高さで表示する。ただし、場合により、直角座標及び平均海面からの高さ、極座標及び平均海面からの高さ又は地心直交座標で表示することができる。」とあるので誤り。
b. 測量法第十一条1項第三号で「測量の原点は、日本経緯度原点及び日本水準原点とする。ただし、離島の測量その他特別の事情がある場合において、国土地理院の長の承認を得たときは、この限りではない。」とあるので正しい。
c. 国土地理院「測量法施行令の一部を改正する政令について」にある通り、平成23年10月21日に改定されたので正しい。
d. 測量法第十一条1項第二号で「距離及び面積は、第三項に規定する回転楕円体の表面上の値で表示する」とあり、第2項では「前項第一号の地理学的経緯度は、世界測地系に従つて測定されなければならない。」とあるので誤り。
e. ジオイドは回転楕円体に対して凸凹しており平面位置を求める測量の基準面には適していないので正しい。
a, dが誤りであるので2が正解となります。
[平成27年度 測量士試験 午前 No.5] 次の文は、公共測量におけるセミ・ダイナミック補正及びその関連事項について述べたものである。明らかに間違っているものはどれか。次の中から選べ。 1. セミ・ダイナミック補正とは、現在公開している基準点の測量成果と、測量して得た観測結果との間に生じる定常的な地殻変動に起因するかい離を補正するものである。 2. セミ・ダイナミック補正に使用する補正パラメータファイルは、適用期間が決められている。 3. 定常的な地殻変動によるひずみの影響は、元期からの経過時間や点間の距離が長いほど大きい。 4. 1級基準点測量において、電子基準点のみを既知点とする場合は、標高補正パラメータファイルを使用したセミ・ダイナミック補正を適用しなければならない。 5. 新点の測量成果は、既知となる基準点の測量成果に補正量を加え、測量計算(網平均計算)を行った後、求められた新しい基準点の位置情報から補正量を差し引くことで求めることができる。
1. 国土地理院「公共測量におけるセミ・ダイナミック補正マニュアル」 の(序)概説 2にある通りで正しい。
2. 作業規程の準則第43条第3項第二号ハで「地殻変動補正パラメータは、測量の実施時期に対応したものを使用するものとする。」とあるので正しい。
3. セミ・ダイナミック補正はプレート運動に伴う定常的な地殻変動による基準点間の歪みの影響を補正するものであるので経過時間や点間距離が長いほど大きくなるので正しい。
4. 作業規程の準則第43条第3項第二号ハで「1級基準点測量において、電子基準点のみを既知点とする場合は、国土地理院が提供する地殻変動補正パラメータを使用しセミ・ダイナミック補正を行うものとする。」とあり、使用するのは標高補正パラメータではないので誤り。
5. 3点の電子基準点を既知点として、新点1点を設置する場合の標準的な手順は以下の通りとなり正しい。
①既知点の測量成果を固定して、基線ベクトルを求め、補正パラメータを使用して既知点の測量成果を今期の座標値に補正する。
②既知点の今期の座標値を固定して網平均計算を行い、新点の今期座標値を求める。
③補正パラメータを使って新点の今期座標値を元期座標値に補正する。
4が誤りであるので4が正解となります。