測量士試験の過去問題を解くシリーズ、H29年度試験版の第5回です。
今回はH29年度午前No.5、8の2問を解いていきます。
No.5から解説します。
次の式は,平面上の点(x,y)を原点(0,0)を中心にΘ回転させた場合の点(X,Y)の座標 を表す式を行列表記したものである。x = 2.0,y = -1.0,Θ = 150°とした場合,X,Y の組合 せとして最も適当なものはどれか。次の中から選べ。 なお,関数の値が必要な場合は,巻末の関数表を使用すること。 X Y 1. -0.914 1.707 2. -1.232 1.866 3. -2.232 0.134 4. -2.732 0.366 5. 2.232 0.134
正答は2です。
計算しながら解説していきます。
まず、問題文に記載されているx = 2.0,y = -1.0,Θ = 150°を代入します。
今回、sin、cosの値は、
sin(Θ+90°)=cosΘ
cos(Θ+90°)=-sinΘ
の公式と巻末の関数表から求めたものを使います。それぞれの値を代入すると、
この行列式の式の右辺を解くと、
となり、
とおけるため、最も近い値をしめしているのは2と解けます。
この問題は三角関数と行列の基本的なルールで解けるため、わからなかった方はそちらの復習をしてください。
特に三角関数は使うことが多いので重要です。
続いて、No.8を解説します。
基準点A,B 間の距離を測定しようとしたところ,障害物があったため,図8 に示すように, それぞれ偏心点A2,B2に偏心して観測を行った。観測により得られた値は,表8 のとおりであ る。基準点A,B 間の基準面上の距離S は幾らか。最も近いものを次の中から選べ。 ただし,α1,α2は偏心角,e1,e2は偏心距離,S1は偏心点A2,B2 間の距離である。また, 距離はすべて基準面上の距離に補正されているものとする。 なお,関数の値が必要な場合は,巻末の関数表を使用すること。 1. 1,936.699m 2. 1,937.617m 3. 1,988.557m 4. 1,995.946m 5. 1,998.975m
正答は2です。
解説していきます。
まず、線SとS1の交点をPとして、2線のなす角の角度をΘとおきます。
また、点A2とPからなる線を線SA、点B2とPからなる線を線SBとおきます。
これより、
・・・➀
とおけます。
この➀、➁、➂を整理します。
➁を整理すると、
同様に➂を整理すると、
上2つの式を➀に代入すると、
となります。これをsinΘについて解いていきます。
加法定理より、
巻末の関数表から、角度のわかっているsin、cosを代入すると、
√3は巻末の関数表の値を代入して、整理します。
問題文から、Θはごく小さな正の角度であると判断でき、これは第1象限に含まれるので、
となり、答えは最も値の近い2となります。
また、作業規程の準則(国土地理院ウェブサイト)の付録6 計算式集内の基準点測量の2.2.3 に記載されている式を覚えていれば、多少の計算で解答できます。
今回のNo.8は公式を用いる方が実用的かもしれませんが、本番で公式を思い出せない場合はその場で解法を導く必要があるので、過去問で色々な解法を探してみるのもよいのではないでしょうか。
今回の記事は以上です。
突然のコメント失礼いたします。
no8の、sinθ=0.031から分からなくなってしまいました。
数行上の分数の式から、なぜこのようになったのでしょうか。
よろしければ、お答えいただけますでしょうか。
コメントありがとうございます。
数式の記号、値を間違って記載しておりました。
ご迷惑をおかけして申し訳ございません。
該当箇所を修正いたしましたので、改めてご覧いただけると幸いです。
はじめまして
丁寧な解説いつも読ませていただいています
本当に勉強になります
ありがとうございます
No.8が途中までしか解けず
加法定理のところがよくわからなくて
質問させていただきました
cosが出てくるところが
理解できません
もしご迷惑でなければ、教えていただきたく連絡いたしました
コメントありがとうございます。
ご質問承りました。
加法定理についてですが、これはsin(α+β)のように、
三角関数の角が2数の加法、または減法で表現される場合
1数ずつの角からなる三角関数のみの式に変形できるというものです。
sin、cosに関するものを記述すると、
sin(α+β) = sinα × cosβ + cosα × sinβ
sin(α-β) = sinα × cosβ – cosα × sinβ
cos(α+β) = cosα × cosβ – sinα × sinβ
cos(α-β) = cosα × cosβ + sinα × sinβ
の4種類があります。
三角関数の公式において、こういった関係式は多く存在します。
加法定理もその一つなので、
試験問題を解くために用いるのであれば、そういうものであるとして
暗記してしまうのがおすすめです。
ご質問にしっかりお答えするには加法定理の証明が必要なのですが、
文章のみでは難しく、長くなりますので、ここでは割愛させてください。
申し訳ありません。
加法定理の証明については色々な形があるようなので、
興味がありましたら調べてみて下さい。
以上です。試験の方、応援しております。
ありがとうございます!
凄くよくわかりました
もう一度加法定理も勉強してみます
本当に丁寧に教えてくださって
ありがとうございました
これからも、閲覧させていただきます!