測量士試験の過去問題を解くシリーズH28年度第6回目です。
今回はH28年度午前No.12の問題を解いていきます。
[H28-午前No.6 問題] 図12に示す水準点A~Dにおいて,公共測量における水準測量を実施し,表12の観測結果を得た。(1)~(6)は観測した水準路線の路線番号である。環閉合差を点検した結果から判断して,再測すべき路線番号の組み合わせとして最も適当なものはどれか。次の中から選べ。 ただし,環閉合差の許容範囲は,Sを観測距離(片道,km単位)としたとき,5mm√Sとする。 なお,関数の値が必要な場合は,巻末の関数票を使用すること。 1. (1) 2. (1)及び(3) 3. (2)及び(3) 4. (4)及び(5) 5. (6)
この問題は、水準測量における環閉合差を点検する計算問題です。
この観測において再測すべき路線とは、観測結果(水準測量なので高低差)の誤差が許容範囲内でない路線のことをいいます。
解答していきます。
まず、図12から、環状になるような水準測量の経路の組み合わせ(=環閉合)を、
(2)と(1)と(4)・・・➀ (1)と(3)と(5)・・・➁ (4)と(5)と(6)・・・➂ (2)と(3)と(6)・・・➃
の4つ取り出します。
これらの環閉合について、個別に閉合差を求め、許容範囲(5mm√S)内かどうかを確認していきます。
このとき、高低差は路線の測定方向と計算に用いる方向によって符号が変わることがある点に注意が必要です。
今回は時計回りで計算していきます。
また、計算中に便宜上、環閉合差をM、環閉合差の許容範囲をT、と書きます。
➀から➃について点検すると、
➀ MはTの範囲外 ➁ MはTの範囲外 ➂ MはTの範囲内 ➃ MはTの範囲内
となります。
このとき、誤差が範囲内に収まっていない➀、➁の環閉合を構成する路線のうち、共通しているものは(1)。
また、誤差が範囲内に収まっている➂、➃の環閉合は、他の路線(2)から(6)で構成されています。
以上から、この問題で明確に再測すべきであるといえる路線は(1)のみであるため、答えは1となります。
計算内容自体は複雑ではないものの、符号の変化がある高低差の扱いは急いでいるとミスしやすいので注意が必要かもしれません。
No.12の解説は以上です。
いつも丁寧な解説ありがとうございます。
初歩的な質問で申し訳ないのですが、符号がマイナスになる判定がわかりませんので、ご教授いただけないでしょうか。
よろしくお願いいたします。m(__)m
コメントありがとうございます。
ご質問承りました。
水準測量における観測高低差は観測点間の高低差を指しますが、これは1つの経路において両端の水準点のどちらを基準とするかで符号が変わります。
ざっくりとした表現をいたしますと、同じ経路でも低い点から高い点に向かって観測すると高低差がプラス、高い点から低い点に向かって観測すると高低差がマイナスとなります。
これが実計算上でどちらになるのかは、1つの環閉合における計算の方向と、表12における路線方向と観測高低差を照らし合わせて判断します。
今回の記事における環閉合➀(経路(2)、(1)、(4)の組み合わせ)について図12を用いて確認すると、時計回りの場合は水準点C→A→B→Cと観測していくことになります。
このとき、経路(2)に当たる観測(水準点C→Aの観測)は表12における経路(2)の路線方向(A→C)と逆方向なので、計算では表の観測高低差と符号を入れ替えています。
以上です。ご不明な点等ございましたら、お手数をおかけしますがまたご返信ください。
管理者さま
素早い対応と返答ありがとうございました。
納得いたしました。
おかげさまでようやく理解することができました(TT)
今後も質問させていただく機会があると思いますので、よろしくお願いいたします。